今を遡ること約三年半、忘れもしない2006年の7月8日。イランのテヘランで、見るからに胡散臭そうな三人組に出会った。
それが、
ママチャリで世界一周無銭旅行をしている日本人のK氏、K氏と一緒にパキスタンからチャリダー(自転車で旅行する人)をしている同じく日本人のミヤちゃん(♂)、そして捉えどころのないフィンランド人のタトゥだった。(のちにもう一人日本人のはじめ君が合流。)
彼ら曰く、カスピ海を手漕ぎでボート横断しようと思ってるんですが一緒に行きませんか、とのこと。
そんな誘われ方をしてのこのこついていった私はよほど地理に疎い馬鹿か、単に救いようのない阿呆だろうか・・?カスピ海は世界一大きな湖だ。
はたして、スムーズに計画が進むはずもなく、一月半カスピ海のほとりを小汚い格好でさまよった。最初に聞いていた話では二週間くらいで終了するってことだったのに。
クルーズ、とかそんなんじゃない。
公園に浮かんでるあのボート。
新品でもない。
そこらへんに転がっているのを中古で買い取ったものだ。
水?もちろん侵入してくる。
野宿はその時生まれて初めて経験した。
けど、一回すると結構次からは平気だった。
見た目はまるっきり漂流難民。
毎日毎日警察の職務質問。そりゃそうだ。怪しいもの。
チャリダーと競えるくらい真黒にもなった。
自分の事は棚にあげて他のメンバーの黒さを笑った。
台所やまな板とか、何もなくってもどこでも料理できるようになった。
その気になればどんな場所でもトイレや風呂場、家にもなる。
一応、それまでは私、普通に普通のバックパッカーをしていた。
女の子だから化粧品も持ってたし、インドで安くてかわいい服探したりもした。
公共の交通機関を使って、いわゆる観光地を訪れていた。
なのに。
カスピ海の旅を終えた私は、すっかり色黒の怪しい人になっていた。
たくましくなったね、はほめ言葉ではないと思う。絶対に。
・・それが、私とタトゥとの出会いでした。
日本人四人にまじってフィンランド人一人、コミュニケーションのストレスは大きかったと思うけれど、(よくいえば)おおらかで、いつも穏やかに静かに佇んでいる人でした。もうすこしぶっちゃけていうなら、彼の奇怪な行動が我々日本人組をたいそう楽しませてもくれました。・・まぁその話はまた別の機会にでも。
それから二年半を経てフィンランドでタトゥと再会。お互い当時のことを苦笑いしながら、いつしかお付き合いが始まっていました、とさ。
写真はあまりとらない私ですが、他のメンバーの撮った写真を後でたくさんもらったので当時の記録は豊富にあります。けれど、あまりに汚らしい自分に耐えられず、恐る恐るでしか開くことができません。(ちなみにブログトップの写真はそのカスピ海からです。K氏撮影。)
と同時に、航海中毎日眺め続けた穏やかなエメラルドグリーンの湖面やオールを漕ぐ音、静かで美しい日の出と日の入り、暗闇の中星と月とランプの灯りの下で語らった夜は何よりもいい思い出でもあります。
カスピ海の話は今でもメンバーで集まると必ずネタになります。他の誰も、まさか私とタトゥがひっつくだろうなんて思っていなかっただろうし。もちろん上に書いた美しい思い出だけでは決してなく、道中では色んないざこざがあったり、私のイライラで迷惑を(たっぷり)かけたりもしました(その節は本当に・・すみませんでした)。今ならば、誘われたとしても間違っても参加しないと断言できますが、それがあったからこその今だと思うと、参加してよかったなぁ、と心から思います。